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ぼそり3◎第6回(平成14年3月1日)
『それ向き、これ向き』
先日、横浜駅近くの某文具店で愛用の銘柄のサインペンを買いました。パイロットのドローイングペンというペンです。150円です。で、この文具店、ブランド力と品揃えの豊富さからかお客さんは切れ目なく来店し、それ自体は大変結構なことなのですが、ことペンがらみとなりますとそうそう微笑んでもいられない状態と言わざるを得ません。
賢明な皆様方におかれてはすでに何故ナニをお分かりのことと思いますが、万が一にもまだお分かりになっておられない方がいるかもしれませんので念のために申し上げます。サインペンの棚の前にはしばしば『試し書き紙』が置かれています。ときに下品な試し書きを見かけることもありますが、たいていの場合は意味のないクルクルとか直線などが書かれています。僕は、どんないやらしい試し書きでもいっこうかまいませんが、それが大量に書かれていた場合はおおいに問題にします。なぜなら、それらがたくさん書かれているほど、そこで売られているサインペンのインク残量は新品にもかかわらず激減していることを意味するからです。そして、多くの人が来店する店鋪の場合、このクルクル等の量も比例的に多くなる可能性が考えられます。運悪く試し書きされ過ぎているペンを選んでしまい、ごく少ない額ではありますが損をすることになってしまう可能性が高くなり、いや、金額の問題ではありません。短き定めとはいえ製作の悦楽を共有することになる道具との時間が、クルクルされすぎたせいでより短くなるのは悲しいことなのです。
そこまで言うのならなんでそこで買ったのだと、皆様方におかれては当然そのようにお思いになられることと思います。えーとですね、僕はそこにはそもそもノートを買いに行ったのです。で、ついうっかりついでにサインペンもと思っちゃったんです。だってサインペン1本買うのに店を変えるってものセコいに過ぎると思ったのです。
僕はサインペンに関しては、基本的には地元の小さな文具店で買うことにしています。本当に小さいお店です。店鋪の広さは多分、十畳くらいです。僕は、これまでそのお店で僕以外のお客さんに会ったことがありません。そういうお店は安心です。サインペンはどれを選んでもハズレがありません。大胆に一本ないし二本をむんずとつかみ、そのままレジに持っていって大丈夫です。そもそも、試し書きの紙自体がありません。だからインクの減りようがないのです。そういったわけですから、サインペンやマジックペンは地域に根ざしたインディーズ系の文具店で購入するのがベストです。もしかしたら試し書き紙を隠匿しているという場合も店によってはあるかもしれませんが、そこまで考えると買い物というよりバトルになってしまいますので、ない場合にはハナからないんだと理解するほうがよろしいかと思います。
それで先日買ったそのサインペンですが、まだ半月もたってないのにもうかすれてきてます。ここまで書いて思ったんですが、もしかしたらインクの初期残量がどうのこうのではなく、僕がすごいペースで使っているのかもしれないという気がしてきました。そういうことなのだとしたら、いっそ万年筆に切り替えた方が趣きの点でも経済的な面でもいいのかもしれません。いや、持ってるんですが、インクの交換が面倒でインク切れたままペン立てでふんぞりかえっている有り様でして、しかしさすが万年筆、インクがなくても堂々としています。
以上、使い捨て文化に警鐘を鳴らすぼそりでした。
【K】
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